2009年8月23日日曜日

アリ・ハーンの《ハムド》

宗教音楽はなにもキリスト教の専売特許ではありません。
音楽を礼拝に用いないはずのイスラーム教にも宗教音楽はあります。
パキスタンのスーフィズム(神秘主義)の「カッワーリー」もその一つ。

カッワーリーの中でも、
ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンの音楽は特に名高いものです。
今から20年くらい前、私はアリ・ハーンの音楽とFMで出会いました。
ラジオから流れてきた音楽は、
たしか「唯一の神アッラーをたたえる歌」と題されていたと記憶しています。
それが《ハムド》です。

ハムドは、二人のソリストの重唱で始まり、
やがてテンポのよいアンサンブルにかわります。
そして所々で「アッラー」のあいの手が入ります。
そしてまたソリストたちの技巧的な歌が繰り返され、
聴き手は陶酔の境地へと誘われることになります。
この陶酔の境地で神に出会うというのが、スーフィズムの極意なのです。

カッワーリーで面白いのは、ソリストが自分の技巧を展開する部分の中に、
インドの階名を歌詞のかわりにして即興的に歌われるフレーズがあることでしょうか。
これはそもそも、インドの正統的な音楽理論も習得していることの証だったようです。
たしかに耳をすますと「サリガマパダニ」という階名が聴こえます。

どのような宗教の音楽であるかは別として、
音楽の場に人が集い、響きを分かち合うとき、
不思議な力が私たちを包むことは確かであるように思います。

暑い時には熱くて辛い料理が合うように、熱い音楽がやっぱり良いですね。

Nusrat Fateh Ali Khan:En Concert A Paris 1(仏Ocora C581658 輸入版)

1 件のコメント:

torajiro さんのコメント...

☆☆☆データベースのクラッシュで消えたコメントです☆☆☆

1. 菅野茂 wrote:

誰かはキリスト教音楽の専門ではなくて宗教音楽の専門なのでここまでやるようですね。ということは声明なども入ってくるのかな?でもまあキリスト教音楽が一番膨大なレパートリーがあるので中心にはなるのでしょう。さすがにイスラム教になるとタリバンなどが音楽を禁止しているので音楽なんかあったのかな、と思っちゃいます。でもあの「アラー・アクバル」などの文句は音楽調ですね。

Reply to this comment | 2009年9月16日 @ 19:16