2009年10月2日金曜日

ロッシーニ《スターバト・マーテル》

カトリックの宗教音楽の中で、オラトリオ、ミサ曲、レクイエムに次いで大作・名作が多いのが、「スターバト・マーテル」でしょう。ロッシーニのこの作品もその一つ。
このタイトルは、「Stabat mater聖母が立っていた」という歌い出しの語句に由来しています。言葉の内容は、イエス・キリストが十字架にかけられた時のマリアの悲しみを描きつつ、罪の赦しをイエスに取り次いでもらうよう、マリアに懇願する祈りとなっています。

音大に入る前、普通の大学の学生として過ごしていた頃、合唱仲間とよく音楽の鑑賞会を開いていました。私は『レコード芸術』で、ジュリーニの演奏が良いと読み、LP を買って聴いていました。ある時、鑑賞会にも持って行ったのですが、仲間はそれよりも良いのがあると言います。そこで紹介されたのがムーティのライブ録音でした(たぶんFM)。オープンリールで録音された演奏を聴いてみて驚きました。ジュリーニがしっとりと悲しんでいるような演奏だったのに対して、ムーティはとにかく熱いのです。しばらくして、その演奏と同時期のものとおぼしきCDが出て、私はもちろん購入しました。

ロッシーニの《スターバト・マーテル》といえば、オペラ的であると当時から批判されていましたが、第4曲「肉体が死ぬ時Quando corpus morietur」はアカペラでずいぶん対位法的です。変だなあとずっと思っていました。それがある時、イタリア・バロックの作曲家マルチェッロのヘブライ語詩編曲集を聴いていたら、馴染みの旋律が聞こえてくではありませんか。「ロッシーニだ!」ロッシーニはマルチェッロを引用していたのです。なぜか? その謎は今も私の心の中にあります。

ロッシーニ:スターバト・マーテル EMI CC33-03254(廃盤?) リッカルド・ムーティ指揮、フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団・合唱団、キャサリン・マルフィターノ(Sop)、アグネス・バルツァ(Alto)、ロバート・ギャンビル(Ten)、グウィン・ホーウェル(Bass)

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