2009年9月21日月曜日

ドヴォルザーク《レクイエム》

生になって合唱を再開し、宗教音楽に目覚めた頃、家の中で古ぼけた楽譜を見つけました。母が昔、市民合唱団で歌っていた時のもののようです。外国語で書かれていた曲名ですが、すぐに分かりました。「Requiem…あ、レクイエムだ。」

当時の僕は、モーツァルトのレクイエムにぞっこんだったからです。けれども、見つけた古い楽譜の作曲者が分からない。「Dvorak…。ドヴォラク???」と埒があかないのです。でも、数は少ないけれど、自分のLPコレクションから、すぐに答えは見つかかりました。「ドヴォルザーク! へえ、ドヴォルザークにもレクイエムってあるんだな。」楽譜を読みこなせない当時の私には、その程度の認識でした。

その後、この作品が名曲であるらしいことを知った私は、当然レコードを探しましたが、カタログにはありません。でも、高二の冬、ついに憧れの曲を聴く時がやってきました。ロンドンレーベルから、ケルテス指揮のLPが発売されたのです。予約を入れてレコード屋へ走る。2枚組のボックスからレコードを出してターンテーブルに載せます。ゆっくりとピックアップを落とすと、聴こえてきたのは想像をはるかに超えた、深い音楽でした。

それから私は独学でピアノを少しだけ弾けるようになり、《レクイエム》の前奏を弾いたものです。前奏だけで、この曲の素晴らしさは分かります。しかも、その素晴らしさは曲の最後まで続きます。粘りのある作品です。もちろんその粘りには技巧的な裏付けがあります。それは循環主題の使い方の巧みさ。十字架の音型が死のテーマとして作品全体を貫いているのです。

その後、大学をやめて音大に入り直した私は、全曲を歌う機会に恵まれました。どっぷりとドヴォルザークに浸った年でした。でも、暗譜で臨んだ本番では、「Confutatis」のソプラノの歌い出しを一緒に歌ってしまいました(汗)。思い出すたびに顔が赤くなるような思いです。

私のお気に入りは写真の、アンチェル指揮チェコフィル盤。弦が何とも渋いのです。西欧のオケは音がきれいすぎます。
さて、このLPでは、ケルテス盤と同じく、「Tuba mirum」で鐘の音が入ります。鐘が入らない演奏もあり、Calmusのミニチュアスコアを見ても指示がないため、どうしたことかと悩んでいましたが、チェコのスプラフォンのミニチュアスコアには「ad libitum」で指示がありました。

アンチェル指揮チェコフィルのドヴォルザーク《レクイエム》独グラモフォンSLGM-1343-44(廃盤)

1 件のコメント:

torajiro さんのコメント...

☆☆☆データベースのクラッシュで消えたコメントです☆☆☆


1. 菅野茂 wrote:

この曲は100分かかるので聴くほうが非常にきつい曲です。ワーグナーやブラームスの影響からは遠ざかっているのですが、地味、地味!ヴェルディの様な派手さがないのでとにかく聴き通すことが大変。これは歌った経験も無いですね。ただ昔バッハアカデミーがチェコのオケを呼んだ時に、僕が聴講した指揮の先生のヘルムート・ヴォルフが自分のシュトットガルトの合唱を指揮したのを500円ぐらいの学生券で入って聴いた覚えだけです。やはりCD同様100分かかりいつも2枚組ですね。ピアノ譜だけ持っていましたが、需要がないので日本の実家に持っていったままにして置いています。これと双璧なのはドヴォルザークの「スターバート・マーテル」ですね。こちらのTVではゲルト・アルブレヒトが良くピアノ弾いて解説していました。

Reply to this comment | 2009年9月20日 @ 00:26
2. torajiro wrote:

へえ、菅野さんにとっては、地味なんですね。
人の感性というものは、それぞれ違っているんですね。

たしかに、この作品は長いことは事実で
演奏が凡庸だったり、テキストの内容に親近感がなければ
退屈なのは違いないです。
私も退屈な演奏だったら寝てしまうことでしょう。

《スターバト・マーテル》は名曲ですが
それでも後半は、私には退屈です。

Reply to this comment | 2009年9月20日 @ 00:34
3. 菅野茂 wrote:

そりゃ、ヴェルディの派手さ知っちゃうとだめですね。それでなくともベルリオーズのレクイエムとかね。これはここで良くやります。普通は楽譜どおりティンパニはちゃんと16個並べます。ノンリントンが最近ティンパニ4人でやったけどありゃアホだね。どんなに彼が著名のプロでも聴きに行きたくないですね。やはり無名のアマチュアでも良いから16個10人の奏者じゃないと行きませんよ。

テキストはいつもの通常文じゃ?余り気にしたことはないですね。最近の日本は小沢さんのブリテン:戦争レクイエムで話題がいっぱいのようですが、あれはあれでどんなテキストを使うにせよ満足の行くものですね。

Reply to this comment | 2009年9月20日 @ 00:53
* torajiro wrote:

ヴェルディは派手でもありますが
退屈させないツボみたいなものを知っていますよね。
あれはやはり劇場で鍛えられた技なんだと思います。
そうそう、ヴェルディも「私のお気に入り」を紹介した時にお話しします。

私は最近の日本の様子は分からないのですが
小澤さんが《戦争レクイエム》やりますか。
ブリテンの音楽の持つ音空間は、小澤さんには合うような気がします。

さて、今日はこのあたりで寝ることとします。

Reply to this comment | 2009年9月20日 @ 01:14
4. 菅野茂 wrote:

あれはオペラそのものですよ。あのレクイエムで演出したらオペラになるんじゃないですか?人受けが特に上手い人のようです。でもワーグナーもレクイエム書いていたら面白かったでしょうね。

こちらはこれからまた練習します。車どうなるんだろう?

Reply to this comment | 2009年9月20日 @ 01:44
5. torajiro wrote:

ヴァーグナーのレクイエムって、たしかに聴いてみたいなあ。
「怒りの日」なんて、あのオーケストレーションで書くと
すごいものができそうですね。

車、壊れたって
東京でなら、安いやつ用意してあげられるんだけど。

Reply to this comment | 2009年9月20日 @ 12:20
6. 菅野茂 wrote:

彼だったらエロチックな怒りの日になりそうですね。ヴェルディの巧みさは構成自体の増減法でしょう。怒りの日では管弦楽を鳴らしまくって始まりますが、それが静まると地味なレチタティーヴォ、とかアリア風な箇所が出てきてほとんどの楽器を使っていません。その起伏がやはり劇的要因として上がるのでしょう。そういう作曲家は他にはリストやチャイコフスキーがいますが、ヴェルディの場合はやはりトゥッティがカトリック的な悪魔的効果が優れていますね。トロンボーンやトランペットの音階が典型的な例です。音階ですからやはりイタリア風のバルブ・トロンボーンやチンバッソが合うのです。音階はスライドでは曖昧になって使えませんね。チューバは音が割れませんから恐怖感が充分に出ません。やはりトロンボーンに限ります。トランペットはピストンやロータリーどちらでも良いのですが、特に後者はピアニッシモが音が全く割れないので木管と信じられないくらいにブレンドしますが、強奏になるとやはり極端に割れまくり、恐ろしい恐怖感が出ますのでウィーンなんかでは凄く重宝されるのですね。ただ一旦壊れたら絶対直せないので捨てるしかありません。またピストンのように片手では吹けません。

Reply to this comment | 2009年9月20日 @ 18:50