2009年9月23日水曜日

ヴァニハル《ミサ・パストラーリス》

ヴィーン古典派といえば、モーツァルト、ハイドン、ベートーヴェンですが、
当然、大勢の作曲家が同時代に活動していました。
ヨハン・バプティスト・ヴァニハルJohann Baptist Vanhal(1739-1813)もその一人。

18世紀の最後の10年、オーストリアのミサ曲には決定的な「変化」が生じていました。
ヨーゼフ・ハイドンによる「交響ミサ曲」です。
これは、バロックの組曲やアリアで曲が構成されるバロックの「カンタータ・ミサ曲」に対して、ミサ曲を「キリエ、グローリア」、「クレド」、「サンクトゥス、ベネディクトゥス、アニュス・デイ」という3つのブロックに分け、各ブロックがそれぞれ一つの交響曲のように組み立てられるというものです。

けれども、こうした「交響ミサ曲」の成立は、ひとえにハイドンに栄誉が帰せられるわけではありません。
既に18世紀の後半では、バロックの祝祭的な音楽様式は次第に退潮し、ミサ曲は啓蒙主義の時代に合わせて簡素化され始めていました。ハイドンはそうした傾向を集約したのです。

ヴァニハルのこの作品も、18世紀のこうした傾向の証拠の一つです。
古典派のミサ曲に親しんでいる人にとっては、モーツァルトやハイドン兄弟の作品と同じ響きを感じ取るかもしれません。ただ、彼らの音楽がかなり国際的な様相を示しているのに対し、このヴァニハルの作品は、クリスマスの音楽ということもあいまって、オーストリアのローカルな伝統を反映しています。たとえばドローンとして持続されるバスは羊飼いの音楽であり、ヨーデル的なフレーズを聞くこともできます。

ヴァニハルなど、今では無名になってしまった作曲家がたくさんいて、モーツァルトやハイドンはその中で音楽生活を送っていたのでした。


Vaňhal:Missa Pastoralis NAXOS 8.555080 Uwe Grodd指揮 Tower Voices New Zealand Aradia Ensemble

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